訪問着「混沌」

 

 昨年に引き続き協会奨励賞という栄誉ある賞を受賞させて頂き、心から喜びと感謝の気持ちで一杯です。

 訪問着の「混沌」は、ピーマンをモチーフにして、友禅染、シルクスクリーン技法を用いて製作しました。

 また、今回の作品制作には、大きな意義があります。それは、この作品から「東北の今」を皆様に知って頂く事です。

 昨年の夏の入りに、郷里仙台で初めての個展を開催させて頂きました。

 街並は、大変美しく整えられ、三年前のあの出来事が、まるで嘘のように感じられました。しかし、会期中の六日間、約千人のご来場の東日本の皆様と接触しているうちに、私の故郷に残された爪痕は未だ根深いものであると思い知らされました。

 そこで、東北人である一表現者として、私に何か出来るだろうかと考えました。今の私に出来る事は、「東北の今」を作品の中にイメージとして取り入れ、それを多くの皆様に観て頂き、東日本に関心を持って頂く事であり、その事が、故郷の復興に繋がる大きな原動力になると思ったのです。

 これは、「輝ける未来、光に向かって模索する東北の今の姿」であります。

 いずれ闇は消え去り、晴れ渡る空が広がってゆき、屈託のない笑顔が溢れる私の古里が返ってくる事を願って止みません。

 これからも、東北人のアイデンティティーに基づいた私の作家性と京都の伝統的な文化との融合から生み出される独特な表現力を大切にして、私にしかできない個性的な作品作りに励んでまいりたいと思っております。最後になりましたが、いつもお世話になっております協会諸先生方に心から感謝申し上げます。

 

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