「佳作」を受賞して

 

 今回の作品は、お気づきの方もいるかも知れないが、二〇一三年関西支部染織展で発表した友禅名古屋帯「かくれんぼ」の連作である。

 振袖「かくれんぼ」は、風に揺られてチラチラ見え隠れする枝垂れ桜を、子供のかくれんぼに見立てて、躍動感溢れる作品に仕上げた。技法は友禅である。

 頬を薔薇色に染めて駆け回る子供達、闇にひっそりと隠れる怪しさ、見つけ見つけられる夕刻までのハラハラとした時間、また、夜に夢の世界でもかくれんぼ遊びを満喫する子供の姿などが作品の中に織りこまれている。

 ついこの間まで、そんなかくれんぼ遊びに夢中になっていた「ギャルが似合う振袖」をコンセプトに製作した。若い娘さん達を振り向かせなければ着物業界は続かないと思ったからだ。三年間温めてきたこの企画が、今春やっと発表できた事に感無量でいる。

 話は変わるが、我々染色作家も製作中はまるで「かくれんぼ」しているみたいだ。外部からの甘いお誘いには「まーだだよ」と自粛する。この、のっぴきならぬ作品とガップリ四つでとことん向き合い、完成するまでは、一人アトリエに缶詰めになっているのである。その間、我々は着物のお絵描き遊びに興じているのではない。我々は作家生命を懸けて真剣勝負で、ゼロからオリジナル作品を生み出す事に挑戦しているのだ。

 年に一度のこの春の展覧会は、「作家活動」という名の「かくれんぼ」に耐え抜いた我々がようやく「見つけられる時」なのである。

 「もーいいかい」

 「もーいいよ」

 すでに準備は出来ている。

 来年こそ私を見守って応援して下さる方々の期待に答えられるように、また、自分の納得いく結果が出せるようにガンバリたい!

 

                                            (本文の一部を訂正しております。)